天王寺
その1-四天王寺
摂津国の天王寺・阿倍野は、平治の乱のおり、清盛の帰京に備えて悪源太義平が陣を構えていると噂された場所です。一時、清盛は九州へ下ることも考えましたが、実際そこにいたのは清盛の危機を知って駆けつけた伊勢・伊賀の平家家人たちでした。厳島神社に伝わる舞楽は清盛が四天王寺に伝承されたものを移したといわれます。『吾妻鏡』によると、大物浦で遭難した源義経一行が吉野に向かう前に一夜を明かしたのも天王寺でした。意外に平家とも縁のある四天王寺を訪れます。
周辺史跡
その2-住吉大社
阿倍野の南に位置する住吉大社は摂津国一宮で、古来、海の神として崇められてきました。『源氏物語』においては、須磨で暴風雨にあった光源氏が住吉明神に助けを求めたり、内大臣となった後、華々しい行列で住吉参詣を行うなど、たびたび登場します。『平家物語』では壇ノ浦の戦いを前に、住吉神社の第三殿から鏑矢の音が響き西の方に飛び去ったという神主の報告が、平家の滅亡を暗示する出来事として語られています。また、『建礼門院右京大夫集』には平資盛が父重盛とともに住吉参詣を行ったことが書かれています。天王寺とともに歴史の分岐点となった住吉を探訪します。
周辺史跡
参考文献
梶原正昭・山下宏明校注『平家物語(二・四)』(岩波文庫)/日下力著『古典講読シリーズ 平治物語』(岩波セミナーブックス)/ 五味文彦・本郷和人編『現代語訳 吾妻鏡(二)』(吉川弘文館)/佐佐木信綱校訂『梁塵秘抄』(岩波文庫)/週刊古寺をめぐる25『四天王寺』(小学館ウィークリーブック)/住吉大社公式HP